2016年 夏を越えて。
09 15, 2016 | Posted in 15日 久米島・田中伸
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2016年夏、沖縄地方全域で叫ばれている、高水温による大規模なサンゴの白化現象が久米島でも起こりました。
短いながらも僕の経験の中にはない規模のもので、普段見慣れた景色が様変わりしていく姿を、ただただ眺める事しかできない事に、胸が痛くなりました。

ここは、インリーフの「ムーチーグー」というポイントの根の上、水深1m程度の場所です。
いつの間にかこんなにもサンゴ達が成長していたという事を、白化することによって船上からでも確認できるようになり、それに気付いた次第です。

ここは、「はての浜」を挟んだリーフの北側のポイント、「ウーマガイ」のドロップ際。
棚の上で水深15m程度の場所です。
白く見えるのはすべて、色が抜けてしまったサンゴやその他のもの。
こんなにもサンゴが沢山あったのだ、という事を改めて感じた景色でした。
白化することによって、その存在を、その命を、改めて認識する。
なんとも皮肉な話ですが、サンゴをより深く認識するきっかけになった夏となりました。

ここは、潮通しの良いポイント「イマズニ」の、水深20m付近。
ところどころ白くなっているサンゴもありますが、テーブル状のサンゴが元気に広がっています。
今では、ギンガメアジやホソカマスの群れが観察出来るポイントとしての認知度が高くなっていますが、その昔ここは「サンゴを魅せる」ポイントだったと。僕が久米島に来た当時には感じ得なかった事ですが、近年それもうなづける、という景色が広がり始めています。
なんとか持ちこたえて欲しいという願いを持ちながら、イマズニに入るたびに、ここへ立ち寄りました。
大型の台風が直撃してしまえばサンゴ達やその他生物は、もろとも粉々に粉砕されてしまう、しかし高水温状態がこれ以上続くと、特に浅場のサンゴ達は壊滅的な状況に陥るのではないだろうか。どうする事もできない、どうなって行くのか想像もつかない、不安な状態で過ごした夏でした。
そして、今。

ここは、真泊港スロープ付近の浅場1mほどの場所。
この画像に見られる、茶色いサンゴ達は、「藻」に覆われ、死滅してしまったであろうサンゴ達です。
今年の5月に大爆発的な産卵を見せてくれたサンゴ達は、見る影もなく、変わり果てた姿になっていました。

ちなみにこれが、藻に覆われたサンゴ。
辛く悲しい現実を突き付けられた思いでした。
しかし、悲しいお知らせだけではありません。
朝夕の外気温が下がり、秋の訪れを感じ始めるとともに、徐々に水温が下がり始めました。
現在の久米島の水温は、概ね28℃台

上の画像、何だかわかりますか?
サンゴを死滅状態に追い込む「藻」、ではなくて・・・
なんと、サンゴ達が「色」を取り戻し始めたのです。

真っ白だったポリプが、健全な状態に戻りつつあります。
種類を問わず僅かながらの水温の低下に乗じて、「待ってました」と言わんばかりに沢山のサンゴ達が色を取り戻し始めました。
この先この海はどうなってしまうのだろうか、という不安な気持ちで夏をすごし、海に入ってもなかなか明るい気持ちになれずにいましたが、やはり自然の力は凄まじく逞しい。僕のちっぽけな想像なんてはるかに超える力を持っているんですね。
しばらく定点観察を続けているサンゴも、やはり健全な色を取り戻してきました。
その様子は、もう少し先にお伝えできたらと思っていますのでお楽しみに。

びくびくしながらも、久しぶりに訪れた「ベジタブルフィールド」のパラオハマサンゴの群生地は、健在どころかその勢力をますます伸ばしているようでした。

この先、再度水温が上昇し31℃を超えるという事は、すこし考えにくいかと思われます。このまま順調に水温が低下していけば、海は健全な状態に戻ってくれることでしょう。
しかし、この先どうなるのかは誰にもわかりません。
大型の台風が直撃すれば、ひとたまりもなく瓦礫と化すことも、この数年で何度か目にしてきましたし、色を取り戻しつつあるサンゴ達も、最後の力を振り絞って足掻いていたにすぎなかった、ということも全くないとは言い切れません。

今、水中ガイドとして僕が出来るのは、この海の姿を日々見続ける事。
ダイバーとしての僕が出来る事は、優しい気持ちで海に接する事。
インストラクターとして僕が出来る事は、海に優しく接するコツを伝える事。
白く儚い姿になって存在を再認識させてくれたサンゴやその他、高水温の影響を受けた生き物達。
その姿を見て、改めて海との接し方を考えさせられました。
いまあたり前に目の前に広がる景色を大切にしよう、と。
皆さんもこれを期に今一度、少しだけ、海との接し方を考えてみてはいかがでしょうか?
水中の景色を眺められる事って、それだけでとんでもなく素晴らしい事です。
海の中にはアスファルトで舗装された場所はなく、生命で溢れ返っています。
あなたのフィンの先にだって。

さて、まずは台風16号。
しばらくボートダイビングはお預けになりそうですが、このカクレクマノミのところへ足しげく通おうと考えていますし、あわよくばサンゴの産卵も狙ってみようか、とも思っています。
海は、きっとまた、僕のちっぽけな想像を見事に裏切ってくれる。
その凄まじい生命力で、大復活を遂げてくれることに期待し、また1ヶ月を過ごそうと思います。
来月、良い形の報告が出来ますように。
久米島ダイブエスティバンより、田中伸でした。バィバィ。

田中 伸
久米島 ダイブエスティバン
短いながらも僕の経験の中にはない規模のもので、普段見慣れた景色が様変わりしていく姿を、ただただ眺める事しかできない事に、胸が痛くなりました。

ここは、インリーフの「ムーチーグー」というポイントの根の上、水深1m程度の場所です。
いつの間にかこんなにもサンゴ達が成長していたという事を、白化することによって船上からでも確認できるようになり、それに気付いた次第です。

ここは、「はての浜」を挟んだリーフの北側のポイント、「ウーマガイ」のドロップ際。
棚の上で水深15m程度の場所です。
白く見えるのはすべて、色が抜けてしまったサンゴやその他のもの。
こんなにもサンゴが沢山あったのだ、という事を改めて感じた景色でした。
白化することによって、その存在を、その命を、改めて認識する。
なんとも皮肉な話ですが、サンゴをより深く認識するきっかけになった夏となりました。

ここは、潮通しの良いポイント「イマズニ」の、水深20m付近。
ところどころ白くなっているサンゴもありますが、テーブル状のサンゴが元気に広がっています。
今では、ギンガメアジやホソカマスの群れが観察出来るポイントとしての認知度が高くなっていますが、その昔ここは「サンゴを魅せる」ポイントだったと。僕が久米島に来た当時には感じ得なかった事ですが、近年それもうなづける、という景色が広がり始めています。
なんとか持ちこたえて欲しいという願いを持ちながら、イマズニに入るたびに、ここへ立ち寄りました。
大型の台風が直撃してしまえばサンゴ達やその他生物は、もろとも粉々に粉砕されてしまう、しかし高水温状態がこれ以上続くと、特に浅場のサンゴ達は壊滅的な状況に陥るのではないだろうか。どうする事もできない、どうなって行くのか想像もつかない、不安な状態で過ごした夏でした。
そして、今。

ここは、真泊港スロープ付近の浅場1mほどの場所。
この画像に見られる、茶色いサンゴ達は、「藻」に覆われ、死滅してしまったであろうサンゴ達です。
今年の5月に大爆発的な産卵を見せてくれたサンゴ達は、見る影もなく、変わり果てた姿になっていました。

ちなみにこれが、藻に覆われたサンゴ。
辛く悲しい現実を突き付けられた思いでした。
しかし、悲しいお知らせだけではありません。
朝夕の外気温が下がり、秋の訪れを感じ始めるとともに、徐々に水温が下がり始めました。
現在の久米島の水温は、概ね28℃台

上の画像、何だかわかりますか?
サンゴを死滅状態に追い込む「藻」、ではなくて・・・
なんと、サンゴ達が「色」を取り戻し始めたのです。

真っ白だったポリプが、健全な状態に戻りつつあります。
種類を問わず僅かながらの水温の低下に乗じて、「待ってました」と言わんばかりに沢山のサンゴ達が色を取り戻し始めました。
この先この海はどうなってしまうのだろうか、という不安な気持ちで夏をすごし、海に入ってもなかなか明るい気持ちになれずにいましたが、やはり自然の力は凄まじく逞しい。僕のちっぽけな想像なんてはるかに超える力を持っているんですね。
しばらく定点観察を続けているサンゴも、やはり健全な色を取り戻してきました。
その様子は、もう少し先にお伝えできたらと思っていますのでお楽しみに。

びくびくしながらも、久しぶりに訪れた「ベジタブルフィールド」のパラオハマサンゴの群生地は、健在どころかその勢力をますます伸ばしているようでした。

この先、再度水温が上昇し31℃を超えるという事は、すこし考えにくいかと思われます。このまま順調に水温が低下していけば、海は健全な状態に戻ってくれることでしょう。
しかし、この先どうなるのかは誰にもわかりません。
大型の台風が直撃すれば、ひとたまりもなく瓦礫と化すことも、この数年で何度か目にしてきましたし、色を取り戻しつつあるサンゴ達も、最後の力を振り絞って足掻いていたにすぎなかった、ということも全くないとは言い切れません。

今、水中ガイドとして僕が出来るのは、この海の姿を日々見続ける事。
ダイバーとしての僕が出来る事は、優しい気持ちで海に接する事。
インストラクターとして僕が出来る事は、海に優しく接するコツを伝える事。
白く儚い姿になって存在を再認識させてくれたサンゴやその他、高水温の影響を受けた生き物達。
その姿を見て、改めて海との接し方を考えさせられました。
いまあたり前に目の前に広がる景色を大切にしよう、と。
皆さんもこれを期に今一度、少しだけ、海との接し方を考えてみてはいかがでしょうか?
水中の景色を眺められる事って、それだけでとんでもなく素晴らしい事です。
海の中にはアスファルトで舗装された場所はなく、生命で溢れ返っています。
あなたのフィンの先にだって。

さて、まずは台風16号。
しばらくボートダイビングはお預けになりそうですが、このカクレクマノミのところへ足しげく通おうと考えていますし、あわよくばサンゴの産卵も狙ってみようか、とも思っています。
海は、きっとまた、僕のちっぽけな想像を見事に裏切ってくれる。
その凄まじい生命力で、大復活を遂げてくれることに期待し、また1ヶ月を過ごそうと思います。
来月、良い形の報告が出来ますように。
久米島ダイブエスティバンより、田中伸でした。バィバィ。

田中 伸
久米島 ダイブエスティバン