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生きた化石。

12 13, 2016 | Posted in 13日 フィリピン/セブ島・白石拓己

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押忍!
最近、洞窟の中に見たことのないイタチウオの仲間が現れる。
ただ1度も写真に撮れたことがない。
それもそのはず、亀裂の奥ぅ~~~~~の方に現れるので、器材が邪魔で体がそこまで辿り着けないのだ。
仕方がないので、途中で器材を脱いで素潜り状態でその亀裂の中に侵入していき、そこでやっと観察にありつく。
もちろん素潜りなので、タイムリミットはせいぜいたったの2分。
そんなことを最近続けていて、本日とんでもない魚に遭遇してしまった。
これはもう事件レベルの、遭遇です!!

実は今回『ヤドカリ特集』で記事を用意していたのですが、急遽記事の変更です。
聞いて驚け、ジュラシックイールじゃい!!
白石です。


bruceleeパラオムカシウナギ-CEB_90742016

2009年にパラオで発見されたのが初めで、私がパラオで働いていた時分のかつての師匠でもある魚類学者の坂上治郎さんが分類されました。
当時ウナギ目に新しく『ムカシウナギ科』という科がつくられ、そこにカテゴライズされることになったのです。
英名はPalauan primitive eel(Protoanguilla palau)。
primitive は“原始の”とかいう意味合いの単語です。
『ムカシウナギ』と名付けられたこの魚には、キチンとその理由がありました。


bruceleeパラオムカシウナギ-CEB_91442016
顔はこんなんで。


bruceleeパラオムカシウナギ-CEB_91512016
尻尾はこんなんです。



bruceleeパラオムカシウナギ-CEB_91362016

当時ミトコンドリア・DNA調査を行った結果、2億年前から存在していることが分かりました。
恐竜が謳歌したジュラ期から、その姿をほとんど変えずに今に至る、まさに『生きた化石』なのです。

現存する他のウナギ目のスタンダードな脊椎骨の数は100個を超えるのですが、このムカシウナギは80個程度しかありません。
ぶっちゃけこの違いは、素人感覚では「へぇ...。」ぐらいで流してしまいそうになりますが、魚類学ではとんでもないことだそうです。
ウナギ目の魚は、進化の過程で関節を沢山増やすことによってフレキシブルにくねらせられる体を獲得し、また体を細長くすることによって、小さい隙間に侵入したり、狭い亀裂にも隠れられるようになりました。
ムカシウナギは、ぱっと見てもイタチウオの仲間と間違えてしまうぐらい、他のウナギと比べて全然短いことが分かります。
80個しかない脊椎骨からも分かるように、進化のだいぶ手前の段階の、つまりプロトタイプ中のプロトタイプなウナギの祖先なのです。


bruceleeパラオムカシウナギ-CEB_91042016

生態はというと、全然俊敏ではなく、手で捕まえることが出来るぐらい、ゆ~~~くり泳ぐ、この魚。
弱肉強食がまかり通る群雄割拠のリーフの上などでは、とてもじゃないけどすぐに捕食されて絶滅してしまうことでしょう。
洞窟の、しかも亀裂の奥~~~の方という、捕食圧は低いがこんな殺風景な、究極に限られたニッチを選択せざるを得ない、弱い魚なのです。
しかしこんな弱い魚が、それこそ恐竜の時代から今まで絶滅することもなく、細々と、しかし強かにもその種を絶やさずに今に至っているこの姿に、感動すら覚えます。

なんか素敵やん。 むちゃむちゃロマンやん。







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